明日から店で試せる、無理のない販売促進の話

明日から店で試せる、無理のない販売促進の話


現場で「販促」と聞くと、チラシやSNS、クーポンみたいな“外に向けたこと”を思い浮かべる方が多いかもしれません。もちろんそれも一つなんですが、24年間、いろんな店の相談に入ってきて感じるのは、忙しい店ほど「店の中の売り方」で伸びる余地が残っていることが多い、という点です。
新しいことを増やすというより、今あるメニューや接客の流れに、ほんの少し言葉や見せ方を足す。そういう販促は、明日からでも動かせます。

1)「売る」より「選びやすくする」だけで変わることがある

ピーク中、ホールが満席で、厨房もガンガン。そんなときに追加注文が止まる瞬間があります。お客さんがメニューを見ながら「んー…」と止まって、結局「とりあえず生」「枝豆」みたいな無難なところに落ち着く場面。私も現場で何度も見ました。

この“止まり”は、商品力というより「選びにくさ」から起きていることがあります。メニューの写真が少ない、説明が短い、人気が見えない、スタッフが手一杯で声をかけられない。お客さんは悪くないし、店も悪くない。ただ忙しい時間帯ほど、選ぶ材料が足りなくなるんですね。

店内でできる販促としては、「迷わない導線」を作ってあげるのが一つです。たとえば、
・最初の一杯に合う“つまみ”を2〜3個だけ目立つ場所に置く
・追加オーダー用に「あと一品」に向くメニューをまとめる
・黒板に“今日、出るのが早い”ものを書いておく
こういうのは、メニュー全体を作り直す話ではなく、今あるものの並べ方の話です。忙しいときほど、お客さんが「それなら頼みやすい」と感じる材料があると助かります。

2)スタッフの一言は、販促というより「会話のきっかけ」になる

「おすすめ言って」と言うのは簡単ですが、現場では、スタッフもコンディションがいろいろです。新人が入ったばかりの日、雨で客足が読めない日、団体が急に入った日。そんな中で「売り込め」と言われると、空気が固くなりやすいのも分かります。

私が相談でよく聞くのは、「おすすめが言えない」「押し売りっぽくなるのが嫌」という声です。ここ、すごく自然な感覚だと思っています。なので、販促を“売り込み”に寄せないで、「選択肢を一つ足す会話」にするとやりやすいことがあります。

例えば注文を取るときに、
・「最初、さっぱり系としっかり系、どちらの気分ですか?」
・「揚げ物は今ちょっと時間かかりそうで、早いのはこの辺です」
・「辛いの大丈夫なら、今日このソース仕上がってます」
みたいに、判断材料を渡す。これならお客さんのための会話として成立します。結果的に、店が出したいものも選ばれやすくなります。

ここでポイントになるのが、言い回しを“個人のセンス”に任せすぎないことです。店長やベテランだけが上手で、他のスタッフが黙ってしまうと、ピークほど差が出ます。だから、店内で共有するのは「完璧なトーク」ではなく、短い型が現実的です。紙一枚で十分で、レジ横や伝票置き場に置いておく店もありました。

3)店内の「見せ方」は、派手にしなくても効くことがある

販促物を作るとなると、デザインや印刷を考えて止まってしまうことがあります。でも実際の店では、A4用紙1枚でも、手書きの一言でも、ちゃんと機能する場面があります。特に効果が出やすいのは「迷いやすいタイミング」に置くことです。

たとえば、
・席に着いて最初に目に入るところ(テーブルのPOP、メニューの1ページ目)
・2杯目を頼む前(ドリンクメニューの見開き、壁の短冊)
・会計前(レジ前のテイクアウト案内、次回使える情報)

忙しい時間帯、ホールがバタついていると、お客さんはスタッフを呼ぶのを遠慮することがあります。そういうとき、視界に入る情報が代わりになります。「今日のおすすめ」「季節の一皿」「今ある限定」など、内容は凝らなくても、目に入るだけで会話が生まれます。

それから、見せ方で意外と大きいのが“名前”です。料理名が抽象的で伝わりにくいと、頼まれにくいことがあります。逆に、素材や味が想像できる言葉が一つ足されると動きます。メニューを大改修しなくても、黒板やPOPの表記だけ変える、というやり方もあります。

4)明日からの一歩は「一箇所だけ触る」くらいが続きやすい

販促は、やることを増やすほど現場が疲れてしまいます。私も、張り切って仕組みを入れたのに、ピークで回らなくなって消えていった取り組みをたくさん見てきました。だから、まずは一箇所だけ触って、手応えを見るやり方が合う店が多い印象です。

例えば明日からなら、
・一番出したいメニューを1つ決めて、スタッフが言いやすい一言を用意する
・メニューの“迷うページ”にだけ、人気マークや一文を足す
・黒板を「おすすめ」ではなく「今すぐ出せる」に寄せてみる
こんな感じでも、店の空気は変わります。

販促というと、外に打つ施策を考えがちですが、店の中の小さな工夫は、忙しい日ほど効いてくることがあります。現場の負担を増やしすぎず、今日の営業が少しだけやりやすくなる。そんな角度で触ってみるのも一つです。


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