今回は、「原価率が違うけど、粗利が同じなら利益も同じなの?」という疑問にお答えします。
一見すると同じように見える「粗利」ですが、原価率によってその内実は大きく変わってきます。
今回は2つのパターンを例に、具体的な数字でざっくりと検証してみますのでご参考になれば幸いです。
提示された2つのパターン
- パターンA
- 原価:4,500円
- 原価率:33.3%
- 売価:13,500円
- 粗利:9,000円
- 粗利益率:66.7%
- パターンB
- 原価:9,000円
- 原価率:50%
- 売価:18,000円
- 粗利:9,000円
- 粗利益率:50%
どちらのパターンも、粗利は9,000円です。しかし、原価率が異なるため、利益は変わってくるのでしょうか?
具体的な数字で検証してみよう
前提条件
- 固定費:
- 人件費(夫婦2人の給与):80万円
- 家賃:20万円
- その他:20万円
- 合計:120万円
- 変動費:
- 原価
- その他:売上の10%
売上300万円の場合
- パターンA
- 変動費: (300万円 x 33.3%) + (300万円 x 10%) = 130万円
- 利益: 300万円 – 130万円 – 120万円 = 50万円
- パターンB
- 変動費: (300万円 x 50%) + (300万円 x 10%) = 180万円
- 利益: 300万円 – 180万円 – 120万円 = 0円
売上200万円の場合
- パターンA
- 変動費: (200万円 x 33.3%) + (200万円 x 10%) = 86万6,000円
- 利益: 200万円 – 86万6,000円 – 120万円 = -6万6,000円(赤字)
- パターンB
- 変動費: (200万円 x 50%) + (200万円 x 10%) = 120万円
- 利益: 200万円 – 120万円 – 120万円 = -40万円(赤字)
損益分岐点の計算
損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 – 変動費率)
- パターンA
- 変動費率 = 33.3% + 10% = 43.3%
- 損益分岐点 = 120万円 ÷ (1 – 0.433) = 211万4,778円
- パターンB
- 変動費率 = 50% + 10% = 60%
- 損益分岐点 = 120万円 ÷ (1 – 0.6) = 300万円
比較表
パターン | 売上300万円の場合 | 売上200万円の場合 | 損益分岐点 |
---|---|---|---|
A | 利益50万円 | 赤字6万6,000円 | 211万4,778円 |
B | 利益0円 | 赤字40万円 | 300万円 |
結果からわかること
同じ粗利9,000円でも、原価率によって利益は大きく変わります。
- 売上300万円の場合: パターンAは利益が出ていますが、パターンBは利益が0円です。
- 売上200万円の場合: どちらも赤字ですが、パターンBの方が赤字額が大きいです。
- 損益分岐点: パターンBの方が高く、より多くの売上を上げないと利益が出ません。
原価率と利益の関係
一般的に、飲食店の原価率は30%程度が理想的と言われています。
- 原価率が高い場合(例:パターンB)
- 売上に対する変動費の割合が大きくなり、利益を圧迫します。
- 損益分岐点が高くなり、より多くの売上を上げないと利益が出ません。
- 立地が良く、回転率が高いなど、特別な強みがないと経営が難しくなります。
- 原価率が低い場合(例:パターンA)
- 売上に対する変動費の割合が小さくなり、利益を確保しやすくなります。
- 損益分岐点が低くなり、比較的少ない売上でも利益を出すことができます。
- 経営が安定しやすく、リスクを抑えることができます。
高原価商品との付き合い方
だからといって、原価率の高い商品は全て排除すべきというわけではありません。
- 集客商品としての役割一部の商品を、原価率が高くても集客のための「目玉商品」として活用する戦略もあります。 この場合、その商品は「販促費」として捉え、他の商品でしっかりと全体の原価率を調整してFLRコストを70%以内に抑えて利益を確保することが重要です。
- 付加価値を高める原価率の高い商品でも、調理方法や盛り付け、サービスなどを工夫して付加価値を高め、価格を上げることで利益を確保することも可能です。 お客様に「この価格でも食べたい!」と思ってもらえるような魅力的な商品を作り上げることが重要です。
まとめ|原価率のコントロールが成功の鍵
今回の記事を通して、原価率が利益に与える影響について理解を深めていただけたでしょうか。
同じ粗利でも、原価率によって利益は大きく変わります。
- 原価率を適切にコントロールすることが、飲食店経営の成功には欠かせません。
- 売上高だけでなく、原価率にも注意を払い、利益を最大化できるような経営を目指しましょう。
- 高原価商品は、戦略的に活用することで、集客や売上アップにつなげることができます。
今回の内容が、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
それでは一日一改善で顔晴りましょう(^^♪